「自筆証書遺言は、自分で書けば有効になるの?」
「全部手書きしないといけない?」
「法務局に預けると何が違う?」
自筆証書遺言は、自分で作成できる遺言書ですが、書き方には法律上のルールがあります。
形式を守っていないと、せっかく作成しても無効になる可能性があります。
また、財産の内容が分かりにくかったり、誰に何を残すのか曖昧だったりすると、相続発生後に家族が困ることもあります。
この記事では、自筆証書遺言の書き方、有効にするための要件、財産目録、検認、法務局の自筆証書遺言書保管制度まで順番に解説します。
自筆証書遺言とは?
自筆証書遺言とは、遺言者本人が自分で作成する遺言書です。
公正証書遺言のように、公証人が作成するものではありません。
自分のタイミングで作成しやすく、証人も原則として不要という特徴があります。
一方で、民法で定められた形式を自分で守る必要があり、形式に不備があると無効になる可能性があります。
遺言書全体の種類や基本については、遺言書とは?種類・効力・書き方をわかりやすく解説も参考にしてください。
自筆証書遺言を有効にするための基本要件
自筆証書遺言には、法律上守らなければならない要件があります。
基本となるのは、次の点です。
- 遺言書の全文を本人が自書する
- 作成日付を本人が自書する
- 氏名を本人が自書する
- 押印する
- 訂正・追加をする場合は所定の方法で行う

本文は本人が自書する
自筆証書遺言では、遺言書の本文を遺言者本人が自書する必要があります。
パソコンで本文を作成し、最後に署名・押印するだけでは、自筆証書遺言としての要件を満たしません。
また、付言事項を書く場合も、原則として自書する必要があります。
日付は正確に書く
遺言書には、作成日付を具体的に記載します。
たとえば、
2026年9月21日
のように、年月日が特定できる形で書きます。
一方で、
「2026年9月吉日」
のように日付を特定できない書き方は適切ではありません。
氏名を書き、押印する
遺言者本人の氏名を自書し、押印します。
法務局の保管制度を利用する場合、氏名は住民票などの記載に合わせて書くことが案内されています。
訂正や追加にもルールがある
書き間違いを直したり、内容を書き加えたりする場合にもルールがあります。
訂正・追加する場所を示し、その旨を付記して署名し、訂正・追加した箇所に押印する必要があります。
修正液や修正テープを使って書き直す方法は避けましょう。
自筆証書遺言の書き方を順番に解説
誰が相続人になる可能性があるか確認する
まず、家族関係を整理します。
配偶者、子ども、両親、兄弟姉妹など、家族構成によって法定相続人は変わります。
誰が相続人になるかを把握しないまま遺言を作ると、家族の状況と合わない内容になる可能性があります。
法定相続人については、法定相続人とは?誰が相続人になるのか順位と範囲をわかりやすく解説をご覧ください。
自分の財産を整理する
次に、自分がどのような財産を持っているか整理します。
- 預貯金
- 土地・建物
- 株式・投資信託
- 生命保険
- 自動車
- その他の財産
- 借入金などの負債
不動産や預貯金は、遺言書を読んだ人が財産を特定できるように整理することが重要です。
誰に何を残すか決める
財産を整理したら、誰に何を残したいか考えます。
たとえば、
- 自宅は配偶者へ
- 預貯金は長男と長女へ
- 特定の財産を孫へ遺贈する
といった形です。
ただし、配偶者や子どもなど一定の相続人には、遺留分が認められる場合があります。
遺留分については、遺留分とは?誰が請求できる?割合・計算方法をわかりやすく解説も確認してください。
遺言書本文を書く
自筆証書遺言の本文は、本人が自書します。
誰にどの財産を相続させるのか、できるだけ曖昧にならないように記載します。
たとえば、不動産であれば、住所だけではなく登記事項証明書を確認し、土地・建物を特定できるように記載することが大切です。
日付・氏名を書いて押印する
本文を書き終えたら、作成年月日を具体的に記載し、氏名を自書して押印します。
この形式は、自筆証書遺言の基本的な要件です。
保管方法を決める
遺言書を作成しても、相続発生後に見つからなければ、その内容を実現できない可能性があります。
自宅で保管する方法のほか、法務局の自筆証書遺言書保管制度を利用する方法があります。
財産目録はパソコンで作ってもいい?
自筆証書遺言では、本文は原則として自書する必要があります。
しかし、財産目録については例外があります。
財産目録は、
- パソコンで作成する
- 家族など別の人が作成する
- 不動産の登記事項証明書を添付する
- 預貯金通帳のコピーを添付する
といった方法も可能です。
ただし、自書ではない財産目録を使う場合には、財産目録のすべてのページに遺言者本人が署名・押印する必要があります。
両面に記載がある場合には、両面への署名・押印が必要です。
また、パソコン等で作成した財産目録の余白に、遺言本文に当たる内容を書き加える方法は適切ではありません。
自筆証書遺言の書き方の具体例
たとえば、自宅を配偶者に相続させたい場合には、次のような形が考えられます。
遺言者は、遺言者が所有する下記不動産を妻○○○○に相続させる。
【土地】
所在:○○市○○町
地番:○番○
地目:宅地
地積:○○平方メートル【建物】
所在:○○市○○町○番地○
家屋番号:○番○
種類:居宅
構造:○○
床面積:○○平方メートル2026年9月21日
住所 ○○県○○市○○町○番○号
遺言者 ○○○○ 印
これはあくまで書き方を理解するための一例です。
実際の遺言では、家族構成や財産内容、遺留分、既存の贈与などによって適切な内容が変わります。
特に不動産を記載する場合は、登記事項証明書などで正確な表示を確認してから作成しましょう。
自筆証書遺言でよくある失敗
自筆証書遺言では、形式だけでなく内容にも注意が必要です。
日付が曖昧
「○年○月吉日」のように、具体的な日付を特定できない書き方は避けます。
財産を特定できない
「自宅を長男に相続させる」だけでは、状況によってはどの不動産を指すのか分かりにくいことがあります。
登記事項証明書や口座情報などを確認し、財産を特定できるようにしましょう。
誰に残すのかが曖昧
同姓同名の家族がいる場合など、受け取る人が分かりにくい記載はトラブルの原因になり得ます。
訂正方法が適切ではない
修正液や修正テープで消して書き直す方法は避け、法律上の訂正方法に従う必要があります。
家族が遺言書を見つけられない
自宅で保管した場合、相続発生後に遺言書が見つからない可能性があります。
紛失や改ざんなどのリスクも考え、保管方法まで含めて検討しましょう。
自筆証書遺言は検認が必要?
自宅などで保管されていた自筆証書遺言は、原則として、相続開始後に家庭裁判所で検認の手続きが必要です。
検認は、相続人に遺言書の存在と内容を知らせ、遺言書の状態を確認する手続きです。
ただし、法務局の自筆証書遺言書保管制度を利用して保管されている遺言書については、家庭裁判所の検認は不要です。
法務局の自筆証書遺言書保管制度とは?
自筆証書遺言書保管制度は、自分で作成した自筆証書遺言書を法務局で保管してもらえる制度です。
主なメリットとして、
- 遺言書の紛失や改ざんを防ぎやすい
- 法務局で形式面の外形的な確認を受けられる
- 相続発生後の検認が不要
- 一定の場合、相続人等へ遺言書が保管されていることを知らせる仕組みがある
などがあります。

2026年現在、遺言書の保管申請手数料は1件3,900円です。
法務局に預ける場合は追加の様式ルールがある
法務局で保管してもらう場合には、民法上の要件に加えて、法務局の様式ルールも守る必要があります。
たとえば、
- A4用紙を使用する
- 指定された余白を確保する
- 片面だけに記載する
- 複数ページの場合はページ番号を付ける
- 複数ページでも綴じない
などです。
法務局への保管を考えている場合は、書き始める前に最新の様式を確認しましょう。
自筆証書遺言と公正証書遺言はどちらがいい?
自筆証書遺言と公正証書遺言には、それぞれメリット・注意点があります。
| 項目 | 自筆証書遺言 | 公正証書遺言 |
|---|---|---|
| 作成 | 本人が作成 | 公証人が作成 |
| 証人 | 原則不要 | 2人必要 |
| 費用 | 自分で作成すれば原則不要 法務局保管は3,900円 |
財産額等に応じた公証人手数料等が必要 |
| 検認 | 自宅保管は原則必要 法務局保管は不要 |
不要 |
| 保管 | 自宅等または法務局 | 公証役場 |
自筆証書遺言は手軽に作成しやすい一方、自分で形式や内容を確認する必要があります。
公正証書遺言は、公証人が関与するため形式面・内容面を確認しながら作成できる点が特徴です。
自筆証書遺言を作る前に家族全体を確認しよう
遺言書を作ること自体が目的になってしまうと、相続全体のバランスを見落とすことがあります。
遺言を考えるときには、
- 法定相続人
- 財産全体
- 遺留分
- 不動産
- 生命保険
- 納税資金
- 家族それぞれの希望
なども合わせて整理することが大切です。
親が元気なうちに確認したいことについては、親が元気なうちにやるべき相続対策10選|何から始めるか順番に解説も参考にしてください。
遺言を含めて相続全体を整理したい方へ
「遺言書を作った方がいいのか」「生命保険や不動産も含めて、どのように財産を残せばよいか分からない」という段階でもご相談いただけます。
にこにこ相続では、ご家族や財産の状況を整理し、必要に応じて弁護士・司法書士・税理士などの専門家への相談も含めて、今後の選択肢を確認します。
まとめ|自筆証書遺言は形式・内容・保管方法まで確認しよう
自筆証書遺言は、自分で作成できる遺言書ですが、法律上の形式を守る必要があります。
特に重要なのは、
- 本文・日付・氏名を本人が自書する
- 押印する
- 日付を具体的に記載する
- 財産目録をパソコン等で作る場合は各ページに署名・押印する
- 訂正・追加は所定の方法で行う
- 相続発生後に見つかるよう保管方法も考える
という点です。
自宅保管だけでなく、法務局の自筆証書遺言書保管制度を利用する方法もあります。
遺言書は「書けば終わり」ではなく、家族や財産全体を整理したうえで、確実に実現できる形で残すことが大切です。
参考情報・出典
本記事は、主に以下の公的機関の情報を参考にしています。
※本記事は、遺言・相続に関する一般的な情報提供を目的としています。実際の遺言内容や法的効果は、ご家族や財産の状況によって異なります。個別具体的な法律判断については弁護士、登記については司法書士、税務については税理士など、内容に応じた専門家へご確認ください。
相続について、何から始めればよいか分からない方へ
相続は、ご家族の状況や財産内容によって必要な対応が異なります。
「自分の場合は何を確認すればいい?」「相続税がかかる可能性はある?」「不動産や生命保険をどう考えればいい?」という段階でも大丈夫です。
まずは現在の状況を整理し、必要に応じて税理士・司法書士・弁護士などの専門家への相談も含めて、今後の選択肢を一緒に確認します。



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