「生命保険は相続対策になると聞いたけれど、なぜ?」
「預金で残すのと生命保険で残すのでは、何が違うの?」
生命保険は、死亡保障を準備するだけでなく、相続対策の一つとして活用されることがあります。
一定の死亡保険金には相続税の非課税枠があるほか、死亡保険金の受取人を指定できること、相続発生後に現金を準備しやすいことなど、相続と相性のよい特徴があるためです。
一方で、生命保険に入れば必ず相続税が安くなるわけではありません。
保険料を誰が負担するのか、誰を被保険者にするのか、誰を受取人にするのかによって税金の種類が変わる場合もあります。
この記事では、生命保険が相続対策に活用される理由や具体的な活用方法、注意点についてわかりやすく解説します。
- 生命保険が相続対策に使われる理由
- メリット1|死亡保険金には相続税の非課税枠がある
- メリット2|死亡保険金の受取人を指定できる
- メリット3|相続発生後の現金を準備しやすい
- メリット4|相続税の納税資金を準備できる
- メリット5|代償分割の資金として活用できる場合がある
- 預金と生命保険は何が違う?
- 生命保険金は遺産分割協議の対象にならない?
- 生命保険金は遺留分とまったく関係ない?
- 相続放棄しても死亡保険金を受け取れる?
- 生命保険の税金は契約形態によって変わる
- 受取人は誰にすればいい?
- 受取人が昔のままになっていないか確認する
- 生命保険を使った相続対策が向いているケース
- 生命保険を使った相続対策の注意点
- 生命保険で相続対策を考えるときの手順
- まとめ|生命保険は相続対策の有力な選択肢の一つ
生命保険が相続対策に使われる理由
生命保険が相続対策に利用される主な理由として、次のようなものがあります。
- 一定の死亡保険金に相続税の非課税枠がある
- 死亡保険金の受取人を指定できる
- 相続発生後の現金を準備しやすい
- 相続税の納税資金を準備できる
- 代償分割のための資金として活用できる場合がある
それぞれ詳しく見ていきましょう。
メリット1|死亡保険金には相続税の非課税枠がある
一定の要件を満たす死亡保険金を相続人が受け取った場合には、相続税の計算上、
500万円 × 法定相続人の数
という非課税限度額があります。
たとえば、法定相続人が妻と子2人の合計3人であれば、
500万円 × 3人 = 1,500万円
が非課税限度額です。
預貯金には、この死亡保険金と同じ非課税制度はありません。
そのため、保有資産や契約内容によっては、現金の一部を生命保険という形で準備することが相続税対策につながる場合があります。
生命保険の非課税枠については、こちらの記事で詳しく解説しています。
生命保険の相続税非課税枠とは?500万円×法定相続人の計算方法を解説
メリット2|死亡保険金の受取人を指定できる
生命保険では、契約時に死亡保険金の受取人を指定します。
一般に、受取人が指定されている死亡保険金は、その受取人が保険契約に基づいて取得する固有の財産と考えられます。
そのため、通常の相続財産とは異なり、原則として遺産分割協議によって分ける財産ではありません。
たとえば、
「妻には当面の生活資金として現金を残したい」
「自宅を相続する子とは別の子にも現金を残したい」
といった希望がある場合、生命保険を活用できることがあります。
ただし、生命保険だけで相続全体の公平性を判断するのではなく、預貯金・不動産・有価証券などを含めた資産全体で考えることが重要です。
死亡保険金が相続財産になるのか、遺産分割や相続税ではどのように扱われるのかについてはこちらをご覧ください。
死亡保険金は相続財産になる?遺産分割・相続税との違いをわかりやすく解説
メリット3|相続発生後の現金を準備しやすい
相続が発生すると、さまざまな場面で現金が必要になることがあります。
たとえば、
- 葬儀などに伴う支出
- 当面の生活費
- 相続税の納税資金
- 不動産の維持費
- 各種手続きに伴う費用
などです。
死亡保険金は、保険会社所定の請求手続きを行い、必要書類などがそろえば受取人へ支払われます。
そのため、相続発生後に必要となる現金をあらかじめ準備する方法の一つになります。
特に相続財産の多くが不動産で、手元の現預金が少ない家庭では、生命保険の役割が大きくなることがあります。
メリット4|相続税の納税資金を準備できる
相続税は原則として、相続の開始があったことを知った日の翌日から10か月以内に申告・納税します。
財産が多くても、その大半が土地や建物の場合には、
「資産はあるけれど、相続税を支払う現金が足りない」
という問題が起こることがあります。
たとえば、
- 自宅
- 賃貸アパート
- 事業用不動産
- 土地
などが資産の大部分を占めているケースです。
こうした場合、あらかじめ死亡保険金を準備しておくことで、相続人の納税資金として活用できる場合があります。
相続税の申告期限についてはこちらの記事をご覧ください。
相続税の申告期限は10か月|いつからいつまで?間に合わない場合も解説
メリット5|代償分割の資金として活用できる場合がある
生命保険は、遺産分割を考えるうえでも活用できる場合があります。
たとえば、父の主な財産が5,000万円の自宅だけで、相続人が長男と長女の2人だったとします。
自宅を物理的に半分ずつ分けることは簡単ではありません。
そこで、長男が自宅を取得し、その代わりに長女へ一定の金銭を支払う方法があります。
これを代償分割といいます。
しかし、長男に十分な現金がなければ、長女へ代償金を支払うことが難しくなります。
そこで、生命保険を利用して現金を準備しておく方法が検討されることがあります。
ただし、誰を保険金受取人にするのか、誰が代償金を支払うのかによって設計の考え方が変わります。
税務上の扱いも含め、実際に代償分割を目的として生命保険を設計する場合には、専門家への確認が重要です。
預金と生命保険は何が違う?
相続という観点から、預金と一定の死亡保険金の主な違いを整理すると次のようになります。
| 預貯金 | 一定の死亡保険金 | |
|---|---|---|
| 相続税 | 原則として相続財産として計算 | 相続税の対象となる場合がある |
| 非課税枠 | 死亡保険金と同じ非課税枠はない | 一定の場合500万円×法定相続人 |
| 受取人 | 遺産分割などによって承継 | 契約上の受取人を指定 |
| 遺産分割 | 原則として対象 | 受取人指定がある場合は原則として対象外 |
| 現金の準備 | 相続手続きが必要 | 受取人が保険会社へ請求 |
ただし、どちらが優れているというものではありません。
預貯金には自由に使えるという大きなメリットがありますし、生命保険には保険料や商品性、解約時の条件などがあります。
それぞれの特徴を理解して使い分けることが大切です。
生命保険金は遺産分割協議の対象にならない?
受取人が指定されている死亡保険金は、一般に受取人固有の財産と考えられ、原則として遺産分割協議の対象にはなりません。
一方、税務上は、被相続人が負担していた保険料に対応する死亡保険金などが「みなし相続財産」として相続税の対象になる場合があります。
つまり、
「遺産分割の対象ではない」ことと「相続税がかからない」ことは別の話
です。
ここは生命保険と相続で特に混同されやすいポイントです。
死亡保険金の扱いについて詳しくはこちらをご覧ください。
死亡保険金は相続財産になる?遺産分割・相続税との違いをわかりやすく解説
相続財産全体について確認したい方はこちらの記事も参考にしてください。
相続財産とは?相続の対象になる財産・ならない財産をわかりやすく解説
生命保険金は遺留分とまったく関係ない?
死亡保険金が受取人固有の財産であるからといって、相続に関する争いと完全に無関係とは限りません。
個別の事情によっては、受取人が取得する死亡保険金と相続財産とのバランスなどが問題となることがあります。
そのため、特定の相続人へ非常に大きな死亡保険金を集中させる場合などは、税金だけでなく相続人間の公平性や紛争リスクについても検討することが大切です。
遺留分の基本についてはこちらの記事をご覧ください。
遺留分とは?誰が請求できる?割合・計算方法をわかりやすく解説
相続放棄しても死亡保険金を受け取れる?
受取人が指定されている死亡保険金は、一般に受取人固有の財産です。
そのため、相続放棄をした人でも、契約上の死亡保険金受取人になっていれば死亡保険金を受け取れる場合があります。
ただし、相続税については注意が必要です。
相続放棄をした人は、死亡保険金を受け取ったとしても、原則として死亡保険金の「500万円×法定相続人の数」の非課税制度を利用できません。
一方、非課税限度額を計算するときの法定相続人の人数については、相続放棄がなかったものとして数えます。
相続放棄についてはこちらの記事もご覧ください。
相続放棄とは?3か月の期限・手続き・注意点をわかりやすく解説
生命保険の税金は契約形態によって変わる
生命保険を相続対策に使うときに、非常に重要なのが誰が実際に保険料を負担するのかです。
死亡保険金にかかる税金は、保険料負担者・被保険者・死亡保険金受取人の関係によって変わります。
| 保険料負担者 | 被保険者 | 受取人 | 主な税金 |
|---|---|---|---|
| 夫 | 夫 | 妻 | 相続税 |
| 妻 | 夫 | 妻 | 所得税 |
| 妻 | 夫 | 子 | 贈与税 |
たとえば「夫が亡くなり妻が保険金を受け取る」という同じ結果でも、誰が保険料を負担していたのかによって税金が変わる可能性があります。
生命保険を相続対策として利用する場合には、単に死亡保険金額だけを見るのではなく、契約形態まで確認しましょう。
受取人は誰にすればいい?
生命保険を相続対策として利用する場合、受取人の設定は非常に重要です。
考えるポイントとしては、
- 誰に現金を残したいのか
- 誰が相続税を負担する可能性が高いのか
- 誰が不動産を相続する予定なのか
- 相続人間の財産バランスはどうなるのか
- 死亡後の生活資金を必要とする人は誰か
などがあります。
「とりあえず配偶者を受取人にする」のではなく、相続財産全体を見ながら検討することが大切です。
死亡保険金の受取人を誰にするか迷っている方はこちらの記事も参考にしてください。
生命保険の受取人は誰にする?相続対策で失敗しない決め方を解説
受取人が昔のままになっていないか確認する
生命保険は加入してから何十年も継続することがあります。
その間に、
- 結婚
- 離婚
- 子どもの誕生
- 受取人の死亡
- 家族関係の変化
- 保有財産の変化
などが起こることがあります。
昔加入した生命保険については、現在の家族構成や相続方針に受取人設定が合っているか確認しておきましょう。
特に受取人がすでに亡くなっている場合には、契約内容によって保険金の受取人が誰になるのかを確認しておくことが重要です。
生命保険を使った相続対策が向いているケース
たとえば、次のようなケースでは生命保険を検討する意味があります。
- 相続税が発生する可能性がある
- 現預金が多く、死亡保険金の非課税枠を活用できる可能性がある
- 相続財産の多くが不動産
- 相続税の納税資金が不足する可能性がある
- 特定の家族へ現金を残したい
- 不動産を特定の相続人へ残したい
- 相続人間の財産バランスを調整したい
ただし、生命保険だけで相続問題をすべて解決できるわけではありません。
遺言書、生前贈与、不動産、預貯金なども含めて総合的に考えることが重要です。
生命保険を使った相続対策の注意点
生命保険にはメリットがありますが、注意点もあります。
保険料の負担がある
当然ながら、生命保険には保険料の支払いが必要です。
相続対策を優先するあまり、現在の生活資金を圧迫してしまっては本末転倒です。
途中解約すると元本割れする場合がある
商品や解約時期によっては、支払った保険料より解約返戻金が少なくなる場合があります。
将来使う可能性がある資金まで生命保険へ移す場合には注意が必要です。
年齢や健康状態によって加入できない場合がある
生命保険は、商品によって年齢や健康状態などの加入条件があります。
相続対策を考え始めた時点で、希望する保険へ必ず加入できるとは限りません。
税金だけで判断しない
相続税の非課税枠があるという理由だけで生命保険へ加入するのではなく、保険料、保障内容、解約返戻金、流動性なども含めて検討しましょう。
生命保険で相続対策を考えるときの手順
生命保険を活用する場合には、いきなり商品を選ぶのではなく、次の順番で整理すると分かりやすいでしょう。
- 現在の相続財産を確認する
- 法定相続人を確認する
- 相続税がかかる可能性を確認する
- 現在加入している生命保険を確認する
- 誰にどの財産を残したいか整理する
- 相続税の納税資金が足りるか確認する
- 死亡保険金が必要か検討する
- 保険料負担者・被保険者・受取人を確認する
- 他の相続対策と合わせて検討する
生命保険はあくまで相続対策の「手段」の一つです。
まず相続全体を整理してから、生命保険が必要かどうかを考えることが大切です。
まとめ|生命保険は相続対策の有力な選択肢の一つ
生命保険には、相続においてさまざまな特徴があります。
主なメリットは、
- 一定の死亡保険金に500万円×法定相続人の非課税枠がある
- 死亡保険金の受取人を指定できる
- 相続発生後の現金を準備しやすい
- 相続税の納税資金として活用できる
- 代償分割の資金として活用できる場合がある
ことです。
一方で、
- 保険料負担者などによって税金の種類が変わる
- 相続放棄した人は死亡保険金の非課税制度を利用できない
- 商品によっては途中解約で元本割れする場合がある
- 年齢や健康状態によって加入できない場合がある
といった注意点もあります。
生命保険は「加入すれば相続税が安くなる商品」ではありません。
誰に、どの財産を、どのように残したいのかを整理したうえで、相続全体の中で活用することが重要です。
まずは現在の資産と生命保険契約を一覧にして、受取人や契約形態が現在の相続方針に合っているか確認してみましょう。
生命保険と相続について、次に確認したい方はこちらの記事も参考にしてください。
- 生命保険の相続税非課税枠とは?500万円×法定相続人の計算方法を解説
- 死亡保険金は相続財産になる?遺産分割・相続税との違いをわかりやすく解説
- 生命保険の受取人は誰にする?相続対策で失敗しない決め方を解説
参考情報・出典
本記事の作成にあたり、主に以下の公的機関の情報を参考にしています。
※生命保険を利用した相続対策の効果や税務上の取扱いは、保険料負担者・被保険者・受取人の関係、家族構成、財産状況などによって異なります。具体的な保険契約については保険会社や保険募集人、税務上の取扱いについては税理士または税務署へご確認ください。
相続全体の基本から確認したい方はこちらをご覧ください。
※本記事は生命保険と相続に関する一般的な情報提供を目的としています。生命保険の課税関係は契約内容や実際の保険料負担者などによって異なります。また、遺産分割・遺留分・税務上の取扱いは個別事情によって判断が異なる場合があります。具体的な相続対策については、税理士・弁護士などの専門家へご確認ください。



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