亡くなった方が株式や投資信託を保有していた場合、「証券口座はどうなるの?」「株はそのまま相続できる?」「NISAで持っていた投資信託はどうなる?」と疑問に思う方も多いでしょう。
株式や投資信託などの金融商品も、原則として相続財産になります。
ただし、銀行預金のように単純に現金を払い戻して終了するとは限りません。
証券会社へ相続の連絡を行い、相続人を確認するための書類などを提出したうえで、相続人名義の証券口座へ株式や投資信託を移管するなどの手続きを行います。
この記事では、亡くなった方の証券口座を見つけた場合の対応から、株式・投資信託・NISAの相続、必要書類、売却する場合の注意点までわかりやすく解説します。
相続財産全体について確認したい方はこちらの記事もあわせてご覧ください。
相続財産とは?相続の対象になる財産・ならない財産をわかりやすく解説
- 株式や投資信託も相続財産になる
- 亡くなった人の証券口座はどうなる?
- 死亡届を出すと証券会社へ自動的に連絡される?
- 亡くなった人の証券口座をどうやって探す?
- どこの証券会社かわからない場合は?
- 証券口座の相続手続きの基本的な流れ
- 株式を相続するには相続人の証券口座が必要?
- 証券口座の相続に必要な書類は?
- 株式は誰が相続する?
- 株式をそのまま相続するメリット
- 株式を相続する場合の注意点
- 相続した株式を売却することもできる
- 相続した株式を売ると税金はどうなる?
- 相続税を払った場合は取得費加算の特例が使えることも
- 投資信託も相続できる?
- NISA口座の株式や投資信託はどうなる?
- NISAで相続した金融商品の取得価額はどうなる?
- 相続税では株式をいくらで評価する?
- 相続時の評価額と売却時の取得費は別
- 証券口座に借金があることも?
- 相続放棄を検討する場合は勝手に売却しない
- 銀行口座と証券口座を一緒に確認しよう
- 証券口座の相続チェックリスト
- まとめ|証券口座も忘れずに相続財産を確認しよう
- 金融資産の相続について次に確認したい記事
株式や投資信託も相続財産になる
亡くなった方が所有していた株式や投資信託などは、原則として相続財産になります。
たとえば、
- 上場株式
- 投資信託
- ETF
- REIT
- 債券
などです。
証券口座にある現金(預り金)についても、相続手続きの対象になります。
そのため、相続が発生したら銀行口座だけではなく、証券会社に口座を持っていなかったか確認することが重要です。
亡くなった人の証券口座はどうなる?
証券会社が口座名義人の死亡を把握すると、原則として口座での取引が制限されます。
その後、相続人などが証券会社所定の相続手続きを行います。
亡くなった方のIDやパスワードを使って家族が勝手に株式を売却するのではなく、証券会社へ死亡の連絡をして正式な手続きを進めましょう。
死亡届を出すと証券会社へ自動的に連絡される?
一般的には、役所へ死亡届を提出しただけで、亡くなった方が利用していたすべての証券会社へ自動的に死亡情報が伝わり、相続手続きが開始されるわけではありません。
そのため、相続人側で証券口座の有無を確認し、利用していた証券会社へ連絡する必要があります。
特に近年はネット証券を利用する方も多く、紙の取引報告書や郵便物がほとんどないケースもあります。
亡くなった人の証券口座をどうやって探す?
まずは、亡くなった方がどの証券会社を利用していたのか確認します。
次のようなものが手掛かりになります。
- 証券会社から届いた郵便物
- 取引残高報告書
- 年間取引報告書
- 配当金に関する書類
- スマートフォンの証券会社アプリ
- パソコンのブックマーク
- メール
- 銀行口座から証券会社への入出金履歴
銀行口座の取引履歴に「○○証券」などへの入金・出金があれば、その証券会社に口座を持っている可能性があります。
どこの証券会社かわからない場合は?
株式を保有していた形跡はあるものの、どこの証券会社かわからないこともあります。
上場株式などについては、証券保管振替機構(ほふり)の登録済加入者情報の開示請求によって、亡くなった方が口座を開設していた証券会社等を確認できる場合があります。
ただし、この制度だけで保有しているすべての金融商品の内容や評価額まで分かるわけではありません。
郵便物や銀行口座の履歴などとあわせて確認しましょう。
証券口座の相続手続きの基本的な流れ
証券会社によって細かな手続きは異なりますが、一般的には次のような流れになります。
- 亡くなった方が利用していた証券会社を確認する
- 証券会社へ死亡の連絡をする
- 保有している金融商品を確認する
- 相続人を確認する
- 遺言書や遺産分割の内容を確認する
- 必要書類を準備する
- 証券会社へ相続書類を提出する
- 相続人名義の証券口座などへ金融商品を移管する
金融商品をそのまま相続する場合、相続人側にも証券口座が必要になることがあります。
株式を相続するには相続人の証券口座が必要?
株式や投資信託をそのまま引き継ぐ場合には、相続人名義の証券口座へ移管するのが一般的です。
そのため、相続人が証券口座を持っていなければ、新たに口座開設が必要になる場合があります。
同じ証券会社の口座への移管が必要なのか、他社の証券口座でも対応できるのかなどは証券会社や金融商品によって異なります。
具体的な方法は、亡くなった方が利用していた証券会社へ確認しましょう。
証券口座の相続に必要な書類は?
必要書類は証券会社や相続の内容によって異なりますが、一般的には次のような書類が求められることがあります。
- 亡くなった方の戸籍関係書類
- 相続人の戸籍謄本
- 相続人の印鑑証明書
- 遺言書
- 遺産分割協議書
- 証券会社所定の相続手続書類
- 相続人の証券口座情報
法定相続情報一覧図を利用できる場合もあります。
銀行口座など複数の相続手続きを行う場合には、法定相続情報証明制度を利用すると戸籍関係書類の提出負担を減らせることがあります。
遺産分割協議書についてはこちらの記事で詳しく解説しています。
遺産分割協議書とは?書き方・必要書類・作成時の注意点をわかりやすく解説
株式は誰が相続する?
遺言書などで取得者が指定されていない場合には、遺産分割協議によって株式を誰が取得するのか決めることがあります。
たとえば、父が1,000万円相当の株式を保有していた場合、
- 長男がすべての株式を取得する
- 複数の相続人で株式を分ける
- 相続後に売却して現金を分ける
などの方法が考えられます。
株式は価格が日々変動するため、どの時点の価格を基準に遺産分割を考えるのかについて、相続人間で認識を合わせておくことも重要です。
遺産分割協議についてはこちらの記事で詳しく解説しています。
遺産分割協議とは?進め方・必要書類・まとまらない場合をわかりやすく解説
株式をそのまま相続するメリット
株式を売却せず、そのまま相続人が引き継ぐ方法があります。
メリットとしては、
- 相続時に急いで売却する必要がない
- 将来の値上がりを期待できる
- 配当を受け取れる可能性がある
などがあります。
亡くなった方が長期保有していた株式などを、そのまま引き継ぎたいと考えるケースもあるでしょう。
株式を相続する場合の注意点
一方、株式には価格変動があります。
相続時には1,000万円だった株式が、その後800万円になることもあれば、1,200万円になることもあります。
特定の相続人が株式を取得し、他の相続人が現金を取得する場合には、その後の価格変動によって不公平感が生じる可能性もあります。
金融商品の特徴や価格変動リスクも理解したうえで遺産分割を考えましょう。
相続した株式を売却することもできる
株式を相続したからといって、そのまま保有し続ける必要はありません。
相続手続きによって相続人の証券口座へ移管した後、相続人自身の判断で売却することもできます。
たとえば、
- 投資経験がない
- 値下がりが心配
- 相続人同士で現金として分けたい
- 相続税の納税資金を確保したい
といった場合には、売却を検討することがあります。
相続した株式を売ると税金はどうなる?
相続した株式を売却して利益が出た場合には、原則として譲渡所得に対して所得税・住民税などがかかります。
ここで重要なのが取得費です。
通常の課税口座で保有していた株式などについては、相続したからといって、相続時の株価がそのまま売却時の取得費になるわけではありません。
原則として、亡くなった方の取得費を相続人が引き継ぎます。
たとえば、亡くなった方が300万円で購入した株式を相続し、相続人が500万円で売却した場合には、原則として亡くなった方の取得費を基礎として譲渡所得を計算します。
実際には売却手数料なども関係するため、正確な税額は個別に確認しましょう。
相続税を払った場合は取得費加算の特例が使えることも
相続税を支払った人が、相続によって取得した株式などを一定期間内に売却した場合には、相続税額の一部を取得費に加算できる特例を利用できる場合があります。
これを相続財産を譲渡した場合の取得費の特例といいます。
適用には、相続税が課税されていることや、売却時期などの要件があります。
相続後に株式などを売却する予定がある場合には、対象にならないか早めに確認しておきましょう。
投資信託も相続できる?
投資信託も原則として相続財産になります。
株式と同様に、証券会社や金融機関で相続手続きを行います。
相続人名義の口座へ移管する方法などがありますが、商品や金融機関によって取扱いが異なる場合があります。
相続した投資信託をそのまま保有するのか、売却するのかは、商品内容・値動き・手数料・今後の資産運用方針などを考えて判断しましょう。
NISA口座の株式や投資信託はどうなる?
亡くなった方がNISA口座で株式や投資信託を保有している場合も、それらの金融商品自体は相続財産になります。
ただし、亡くなった方のNISA口座や非課税枠を相続人がそのまま引き継ぐことはできません。
相続人自身がNISA口座を持っていたとしても、亡くなった方のNISA口座にあった金融商品を、そのまま相続人のNISA口座へ移管する仕組みではありません。
証券会社所定の相続手続きを行い、相続人の課税口座などへ移管することになります。
NISAで相続した金融商品の取得価額はどうなる?
NISA口座で保有されていた上場株式や投資信託等を相続した場合には、通常の課税口座で保有されていた金融商品とは、相続後の取得価額の扱いが異なることがあります。
一般に、相続開始時の時価を基準として、相続人の課税口座における取得価額が決まる取扱いがあります。
その後、相続人が課税口座で売却した場合には、その取得価額を基準として譲渡損益を計算します。
NISAの相続は通常の課税口座とは税務上の扱いが異なるため、実際の取得価額や手続きについては証券会社や税理士などへ確認しましょう。
相続税では株式をいくらで評価する?
株式や投資信託を相続した場合には、相続税を計算するための評価も必要になります。
上場株式については、原則として相続開始日の終値だけで決まるわけではありません。
一定のルールに基づき、
- 相続開始日の終値
- 相続開始月の毎日の終値の平均額
- 相続開始月の前月の毎日の終値の平均額
- 相続開始月の前々月の毎日の終値の平均額
などを比較して評価します。
実際には、相続開始日が取引のない日に当たる場合などにもルールがあります。
投資信託についても、その種類や商品内容に応じた相続税評価方法があります。
金融資産が多い場合には、税理士へ相談することも検討しましょう。
相続税の基本についてはこちらの記事で詳しく解説しています。
相続税とは?いくらからかかる?基礎控除と計算方法をわかりやすく解説
相続時の評価額と売却時の取得費は別
ここは混同しやすいポイントです。
株式については、
- 相続税を計算するための「相続税評価額」
- 相続後に売却益を計算するための「取得費」
は別のルールで考えることがあります。
たとえば、通常の課税口座で保有していた株式は、相続税では相続時の評価ルールを使いますが、相続後の売却では原則として被相続人の取得費を引き継ぎます。
そのため、
「相続税評価額が500万円だったから、売却時の取得費も500万円」
とは限りません。
一方、NISA口座から相続する金融商品では取得価額の取扱いが異なるため、口座の種類も確認することが重要です。
証券口座に借金があることも?
証券口座を確認するときには、保有資産だけではなく取引状況にも注意しましょう。
信用取引などを行っていた場合、未決済の建玉や債務などが存在する可能性があります。
また、相場が急変すると評価損が拡大する可能性もあります。
相続ではプラスの財産だけでなく、原則として借金などのマイナスの財産も対象になります。
投資資産が多く見えても、負債を含めた財産全体を確認することが重要です。
相続放棄を検討する場合は勝手に売却しない
亡くなった方に多額の借金があり、相続放棄を検討している場合には特に注意が必要です。
相続財産である株式などを勝手に売却・処分すると、その行為の内容によっては相続放棄との関係で問題になる可能性があります。
相続放棄を検討している場合には、相続財産を処分する前に弁護士などの専門家へ相談すると安心です。
相続放棄は、原則として自己のために相続の開始があったことを知った時から3か月以内に家庭裁判所へ申述する必要があります。
相続放棄についてはこちらの記事で詳しく解説しています。
相続放棄とは?3か月の期限・手続き・注意点をわかりやすく解説
銀行口座と証券口座を一緒に確認しよう
相続財産を調べるときには、銀行口座だけ、証券口座だけと分けて考えないことが大切です。
亡くなった方の金融資産として、
- 銀行預金
- 株式
- 投資信託
- 債券
- 証券口座の預り金
- 生命保険
などをまとめて確認しましょう。
銀行口座の相続についてはこちらの記事で詳しく解説しています。
相続した預貯金はどうする?銀行口座の凍結・解約・払い戻し手続きをわかりやすく解説
証券口座の相続チェックリスト
- 亡くなった方が利用していた証券会社を確認したか
- 株式・投資信託・債券などの保有商品を確認したか
- 証券口座内の預り金を確認したか
- NISA口座の有無を確認したか
- 信用取引などの負債がないか確認したか
- 遺言書を確認したか
- 相続人を確認したか
- 誰が金融商品を取得するか決めたか
- 相続人側の証券口座が必要か確認したか
- 相続税申告の必要性を確認したか
- 売却する場合の取得費・税金を確認したか
まとめ|証券口座も忘れずに相続財産を確認しよう
亡くなった方が保有していた株式や投資信託などは、原則として相続財産になります。
相続が発生したら、銀行口座だけでなく証券口座についても確認しましょう。
基本的な流れは、
- 証券会社を確認する
- 死亡の連絡をする
- 保有商品や負債を確認する
- 相続人・遺産分割の内容を確認する
- 必要書類を提出する
- 相続人名義の口座などへ移管する
となります。
また、NISAで保有していた金融商品も相続財産になりますが、亡くなった方のNISA口座や非課税枠をそのまま引き継ぐことはできません。
株式については相続後も価格が変動するため、誰が取得するのか、そのまま保有するのか、売却するのかについても検討が必要です。
預貯金・株式・投資信託・保険・不動産などを一つずつ確認し、相続財産全体を把握することが、円滑な相続の第一歩です。
預貯金の相続手続きについては、こちらの記事もあわせて確認してください。
相続した預貯金はどうする?銀行口座の凍結・解約・払い戻し手続きをわかりやすく解説
金融資産の相続について次に確認したい記事
- 相続した預貯金はどうする?銀行口座の凍結・解約・払い戻し手続きをわかりやすく解説
- 相続財産とは?相続の対象になる財産・ならない財産をわかりやすく解説
- 遺産分割協議とは?進め方・必要書類・まとまらない場合をわかりやすく解説
- 遺産分割協議書とは?書き方・必要書類・作成時の注意点をわかりやすく解説
- 相続税とは?いくらからかかる?基礎控除と計算方法をわかりやすく解説
- 相続放棄とは?3か月の期限・手続き・注意点をわかりやすく解説
参考情報・出典
本記事の作成にあたり、主に以下の公的機関・業界団体の情報を参考にしています。
※制度や取扱いは改正される場合があります。具体的な手続きについては、利用している証券会社や税理士等の専門家にもご確認ください。
※本記事は株式・投資信託・証券口座の相続に関する一般的な情報提供を目的としています。証券会社ごとに必要書類や移管方法、NISAの取扱い、金融商品の取扱いが異なる場合があります。具体的な手続きについては各証券会社へ確認し、相続税・譲渡所得については税理士、相続放棄や相続トラブルについては弁護士などの専門家へご確認ください。


コメント