親から土地を相続したものの、「使う予定がない」「遠方にあって管理できない」「売ろうとしても買い手が見つからない」と困ってしまうケースがあります。
土地は所有しているだけでも固定資産税や管理の負担が発生することがあり、不要だからといって簡単に放棄できるものではありません。
しかし、相続した土地を手放す方法は売却だけではありません。
状況によっては、隣地所有者などへの売却・譲渡、自治体等への寄付、そして「相続土地国庫帰属制度」を利用して国へ土地を引き渡す方法も考えられます。
この記事では、相続した土地がいらない場合に考えられる選択肢と、それぞれの注意点をわかりやすく解説します。
不動産を相続したときの手続き全体から確認したい方は、こちらの記事をご覧ください。
不動産を相続したら何をする?手続きの流れと相続登記をわかりやすく解説
- 相続した土地がいらない場合はどうする?
- 方法① 土地を売却する
- 方法② 隣地所有者などへ売却・譲渡する
- 方法③ 自治体などへの寄付を検討する
- 方法④ 土地を活用する
- 方法⑤ 相続土地国庫帰属制度を利用する
- 昔相続した土地でも利用できる
- 相続土地国庫帰属制度は誰が利用できる?
- どんな土地でも国が引き取ってくれるわけではない
- 建物付きの実家をそのまま国へ渡すことはできない
- 境界が分からない土地にも注意
- 相続土地国庫帰属制度には費用がかかる
- 相続放棄をすれば土地だけ手放せる?
- 相続した土地を共有名義にする場合も注意
- 土地を手放す前に相続登記も確認する
- 相続した土地を手放すときの判断順序
- 売却と国庫帰属は費用まで比較する
- それでも手放せない場合は適切に管理する
- まとめ|いらない土地でも放置せず、手放す方法を検討しよう
- 不動産相続について次に確認したい記事
相続した土地がいらない場合はどうする?
不要な土地を相続した場合、主に次のような選択肢があります。
- 土地を売却する
- 隣地所有者などへ売却・譲渡する
- 自治体などへの寄付を検討する
- 土地を活用する
- 相続土地国庫帰属制度を検討する
土地の場所、面積、利用状況、境界、建物の有無などによって適した方法は変わります。
まずは、
「本当に売れない土地なのか」
を確認したうえで、ほかの方法を検討していくとよいでしょう。
方法① 土地を売却する
今後利用する予定がない土地であれば、まず検討したいのが売却です。
売却できれば土地を現金化でき、今後の固定資産税や管理の負担をなくすことができます。
まずは土地の価格と需要を確認する
「田舎だから売れないだろう」と思っていても、実際には一定の需要がある場合があります。
たとえば、
- 近隣住民が駐車場として利用したい
- 資材置き場として利用したい
- 隣地所有者が土地を広げたい
- 住宅・事業用地として需要がある
といった可能性があります。
最初から売れないと決めつけず、不動産会社などに相談して市場価格や需要を確認してみましょう。
相続した不動産を売却するときの流れや税金についてはこちらの記事で詳しく解説しています。
相続した不動産を売却するには?流れ・税金・注意点をわかりやすく解説
売却価格より「将来の負担」が重要な場合もある
土地によっては、高い価格で売ることよりも、今後の管理負担をなくすことを優先した方がよいケースがあります。
たとえば、
- 固定資産税
- 草刈り・樹木の管理費
- 現地までの交通費
- 不法投棄への対応
- 境界や近隣への対応
などが長期間続けば、累計では大きな負担になります。
売却価格だけではなく、今後10年・20年所有した場合にどの程度の費用と手間がかかるのかまで考えて判断することが大切です。
方法② 隣地所有者などへ売却・譲渡する
一般の買い手が見つかりにくい土地でも、隣接する土地の所有者にとっては価値がある場合があります。
たとえば、
- 庭を広げられる
- 駐車スペースを増やせる
- 土地の形を整えられる
- 一体利用することで使いやすくなる
- 接道状況などが改善する場合がある
といったケースです。
そのため、不動産会社へ売却を依頼する際には、隣地所有者への打診が可能か相談してみるのも一つの方法です。
無償で譲渡する場合にも注意
「無料なら引き取ってもらえるのでは?」と考えることもあるでしょう。
しかし、個人から個人へ不動産を無償で譲渡した場合には、受け取った側に贈与税が生じる可能性があります。
また、所有権移転登記の登録免許税や司法書士報酬などの費用も考える必要があります。
法人や自治体などへ譲渡する場合には課税関係が異なることもあるため、無償譲渡を行う場合でも税理士や司法書士などへ確認したうえで進めましょう。
方法③ 自治体などへの寄付を検討する
土地を自治体へ寄付できないか考える方もいます。
ただし、自治体がすべての土地を受け取ってくれるわけではありません。
自治体が土地を取得すれば、その後は維持・管理の費用が発生するためです。
道路、公園、公共施設などとして利用価値がある土地であれば受け入れられる可能性がありますが、利用予定のない土地については寄付を断られることもあります。
寄付を検討する場合は、土地が所在する自治体へ受入条件を確認しましょう。
方法④ 土地を活用する
売却する前に、土地を活用できないか検討する方法もあります。
立地などによっては、
- 月極駐車場
- コインパーキング
- 資材置き場
- 貸地
- 住宅用地
などとして活用できる可能性があります。
ただし、土地活用には初期費用や管理費が必要になることもあります。
「土地を持っているから何か建てる」のではなく、周辺に本当に需要があるのか、投資額を回収できるのかを確認することが重要です。
方法⑤ 相続土地国庫帰属制度を利用する
売却や活用が難しい相続土地について検討できる制度が、相続土地国庫帰属制度です。
この制度は2023年4月27日に始まりました。
相続または相続人に対する一定の遺贈によって土地の所有権を取得した人が、一定の要件を満たした場合に、法務大臣の承認を受けて土地を国へ引き渡すことができる制度です。
不要な土地を無条件で国へ返せる制度ではなく、申請できる人・土地の状態・費用などについて要件があります。
昔相続した土地でも利用できる
相続土地国庫帰属制度は、制度開始後に相続した土地だけが対象というわけではありません。
2023年4月27日より前に相続した土地についても、申請資格や土地の要件を満たせば利用を検討できます。
そのため、
「何十年も前に親から相続した土地だから対象外」
とは限りません。
相続土地国庫帰属制度は誰が利用できる?
基本的には、相続や遺贈(相続人に対する遺贈に限ります)によって土地の所有権を取得した相続人が申請できます。
一方、自分で購入した土地について、単に「不要になったから国へ返したい」という理由だけでは、原則としてこの制度を利用することはできません。
共有地は共有者全員で申請する
共有している土地の場合には注意が必要です。
共有地について相続土地国庫帰属制度を利用する場合には、相続や遺贈によって持分を取得した相続人を含む共有者全員が共同して申請する必要があります。
共有者の1人だけが、土地全体を国へ引き渡す申請をすることはできません。
相続不動産を共有する場合の注意点についてはこちらの記事で詳しく解説しています。
相続した不動産を共有名義にするとどうなる?メリット・デメリットと注意点を解説
どんな土地でも国が引き取ってくれるわけではない
相続土地国庫帰属制度で特に重要なのが、土地の要件です。
国が無条件ですべての土地を引き取る制度ではありません。
たとえば、次のような土地は申請できなかったり、審査の結果、国庫帰属が認められなかったりする可能性があります。
- 建物がある土地
- 抵当権などの担保権が設定されている土地
- 賃借権・地上権など他人の使用収益権が設定されている土地
- 一定の他人による使用が予定されている土地
- 一定の土壌汚染がある土地
- 境界や所有権の範囲について問題がある土地
- 所有権について争いがある土地
- 通常の管理や処分に過大な費用・労力を必要とする土地
土地の状態によって、申請段階で却下される要件と、審査の結果として承認されない要件があります。
そのため、
「売れない土地なら国に渡せばいい」
と単純に考えることはできません。
建物付きの実家をそのまま国へ渡すことはできない
特に注意したいのが、実家を相続したケースです。
相続土地国庫帰属制度は土地についての制度であり、建物が存在する土地は申請できません。
そのため、古い実家が建っている土地について制度を利用したい場合には、原則として建物を撤去する必要があります。
解体には数百万円規模の費用がかかる場合もあるため、
- 建物付きで売却する
- 古家付き土地として売却する
- 解体して土地を売却する
- 解体して国庫帰属制度を申請する
などを比較することが重要です。
制度だけを見て判断せず、解体費用や売却可能性まで含めて検討しましょう。
境界が分からない土地にも注意
相続した山林や昔から所有している土地では、
「どこからどこまでが自分の土地なのか分からない」
ということがあります。
相続土地国庫帰属制度では、土地の所在や境界を明らかにするための資料を申請時に提出します。
境界や所有権の範囲について争いがある土地などは、制度を利用できない場合があります。
なお、すべてのケースで申請前に確定測量をしなければならないという制度ではありません。
ただし、境界に問題がある場合には、申請前に法務局へ相談したり、必要に応じて土地家屋調査士などへ相談したりすることを検討しましょう。
相続土地国庫帰属制度には費用がかかる
相続土地国庫帰属制度は、無料で土地を国へ引き渡せる制度ではありません。
申請時に審査手数料が必要
2026年9月現在、承認申請をするときには、土地1筆につき14,000円の審査手数料が必要です。
申請した土地が最終的に国庫帰属を認められなかった場合でも、審査手数料は必要となります。
承認されたら負担金を支払う
国庫帰属が承認された場合には、原則として10年分の土地管理費相当額として負担金を納付する必要があります。
負担金は土地の種類や場所、面積などによって異なります。
一般的な宅地や雑種地などでは、面積にかかわらず20万円となるケースがあります。
一方、一定の市街地にある宅地や農地、森林などは、面積などに応じて負担金が算定されます。
そのため制度を利用する場合には、
- 審査手数料
- 負担金
- 建物があれば解体費用
- 土地の状態を整えるための費用
- 境界などを確認するための費用
まで含めて検討することが大切です。
相続放棄をすれば土地だけ手放せる?
「いらない土地だけ相続放棄すればいいのでは?」と思う方もいるかもしれません。
しかし、相続放棄は特定の財産だけを選んで放棄する制度ではありません。
相続放棄をすると、その相続について原則として初めから相続人ではなかったものとして扱われます。
そのため、
「預貯金は相続するけれど、不要な土地だけ相続放棄する」
という選択はできません。
また、相続放棄は原則として、自己のために相続の開始があったことを知った時から3か月以内に家庭裁判所へ申述する必要があります。
不要な土地があるからという理由だけで相続放棄を決めるのではなく、預貯金・有価証券・不動産・借金など相続財産全体を確認して判断しましょう。
相続放棄についてはこちらの記事で詳しく解説しています。
相続放棄とは?3か月の期限・手続き・注意点をわかりやすく解説
相続した土地を共有名義にする場合も注意
兄弟姉妹で土地を相続すると、「とりあえず共有にしておこう」と考えることがあります。
しかし、共有者が増えると、将来の売却や活用について意見をまとめることが難しくなる場合があります。
さらに共有者の1人が亡くなれば、その持分について次の相続が発生し、権利関係がより複雑になる可能性があります。
また、相続土地国庫帰属制度を利用するときも、共有地であれば共有者全員での申請が必要になります。
相続不動産の共有についてはこちらの記事で詳しく解説しています。
相続した不動産を共有名義にするとどうなる?メリット・デメリットと注意点を解説
土地を手放す前に相続登記も確認する
相続した土地については、相続登記も重要です。
2024年4月1日から相続登記は義務化されています。
相続によって不動産を取得した相続人は、原則として、自分のために相続が開始したことと、その不動産の所有権を取得したことを知った日から3年以内に相続登記を申請する必要があります。
相続土地国庫帰属制度については、相続登記が済んでいなくても一定の書類を添付して申請できる場合があります。
一方、通常の売却や譲渡を行う場合には、相続登記を行って所有関係を整理しておく必要があります。
相続登記についてはこちらの記事で詳しく解説しています。
相続した不動産の名義変更とは?相続登記の期限・必要書類・費用をわかりやすく解説
相続した土地を手放すときの判断順序
不要な土地を相続した場合には、次の順番で検討すると整理しやすくなります。
- 自分や家族が将来利用する可能性を確認する
- 土地の市場価値を確認する
- 一般市場で売却できないか検討する
- 隣地所有者などへの売却・譲渡を検討する
- 土地活用が可能か確認する
- 自治体などへの寄付の可能性を確認する
- 相続土地国庫帰属制度を検討する
特に重要なのは、最初から
「価値のない土地」
と決めつけないことです。
自分には必要のない土地でも、隣地所有者や地域の事業者などにとっては利用価値があるかもしれません。
売却と国庫帰属は費用まで比較する
相続土地国庫帰属制度を検討するときは、単純に
「土地が売れないから国へ渡そう」
と考えるのではなく、売却した場合と国庫帰属した場合の費用を比較してみましょう。
たとえば、低価格でも土地を売却できれば、
- 売却代金を受け取れる
- 負担金が不要
- 今後の管理義務をなくせる
可能性があります。
一方、国庫帰属制度では、土地を国へ引き渡すために審査手数料や負担金、場合によっては建物解体などの費用が必要です。
したがって、
「いくらで売れるか」だけではなく、「どの方法なら最終的な負担を最も小さくできるか」
という視点で比較することが重要です。
それでも手放せない場合は適切に管理する
売却できず、寄付も難しく、国庫帰属制度の要件も満たさない場合には、当面土地を所有し続けることになります。
その場合には、
- 雑草や樹木を管理する
- 不法投棄がないか確認する
- 境界の状態を確認する
- 固定資産税などの費用を把握する
- 近隣への影響がないか確認する
- 定期的に売却可能性を見直す
など、適切な管理を続けましょう。
遠方の土地で自分で管理できない場合には、管理会社などへ依頼する方法もあります。
まとめ|いらない土地でも放置せず、手放す方法を検討しよう
相続した土地が不要な場合でも、所有している限り管理や税金などの負担が続く可能性があります。
まずは、
- 売却する
- 隣地所有者などへ売却・譲渡する
- 寄付を検討する
- 土地を活用する
- 相続土地国庫帰属制度を利用する
といった方法を比較してみましょう。
相続土地国庫帰属制度によって、これまで売却が難しかった相続土地にも新しい選択肢ができました。
ただし、どんな土地でも国が引き取ってくれるわけではなく、土地の要件や審査、費用があります。
「売れない=国に渡す」ではなく、売却・活用・譲渡・寄付・国庫帰属を比較したうえで、その土地に合った方法を選ぶことが大切です。
不要な土地だからと放置せず、将来の管理負担まで考えて早めに方向性を決めていきましょう。
不動産相続全体の手続きについては、親記事であるこちらの記事もあわせて確認してください。
不動産を相続したら何をする?手続きの流れと相続登記をわかりやすく解説
不動産相続について次に確認したい記事
- 不動産を相続したら何をする?手続きの流れと相続登記をわかりやすく解説
- 相続した不動産を売却するには?流れ・税金・注意点をわかりやすく解説
- 相続した不動産を共有名義にするとどうなる?メリット・デメリットと注意点を解説
- 相続した不動産の名義変更とは?相続登記の期限・必要書類・費用をわかりやすく解説
- 相続放棄とは?3か月の期限・手続き・注意点をわかりやすく解説
参考情報・出典
本記事の作成にあたり、主に以下の公的機関の情報を参考にしています。
※相続土地国庫帰属制度は、すべての土地を国が引き取る制度ではありません。土地の状態や権利関係などによって申請できない場合や、承認されない場合があります。具体的な申請可否や必要書類については法務局へご確認ください。
※本記事は不動産・相続に関する一般的な情報提供を目的としています。相続土地国庫帰属制度の申請資格、対象となる土地、審査手数料、負担金などは制度改正や個別の土地の状況によって異なる場合があります。制度については法務局、登記については司法書士、境界については土地家屋調査士、税務については税理士または税務署などへご確認ください。



コメント