親が亡くなり実家を相続すると、「この家をどうすればいいのだろう?」と悩む方は少なくありません。
自分で住むのか、売却するのか、賃貸に出すのか。それとも、しばらく空き家として残しておくのか。
実家は思い入れのある財産である一方、固定資産税や修繕費、管理の手間などもかかります。
そのため、気持ちだけで判断するのではなく、将来の利用予定・維持費・資産価値・税金・家族の意向などを整理して判断することが大切です。
この記事では、実家を相続したときの主な選択肢と、それぞれのメリット・注意点をわかりやすく解説します。
不動産を相続したときの手続き全体から確認したい方は、こちらの記事をご覧ください。
不動産を相続したら何をする?手続きの流れと相続登記をわかりやすく解説
実家を相続したら、まず何をする?
実家をどうするか考える前に、まず相続手続きを進める必要があります。
主な流れは次のとおりです。
- 遺言書の有無を確認する
- 相続人を確認する
- 実家の名義や権利関係を確認する
- 実家の価値を確認する
- 遺産分割について話し合う
- 相続登記を行う
2024年4月1日から相続登記は義務化されています。
相続によって不動産を取得した相続人は、原則として、自分のために相続が開始したことと、その不動産の所有権を取得したことを知った日から3年以内に相続登記を申請する必要があります。
正当な理由なく申請義務を怠った場合には、10万円以下の過料の対象となる可能性があります。
実家を売却する場合にも相続登記が必要になるため、「どうするかまだ決めていないから」と長期間放置しないようにしましょう。
相続登記の期限や必要書類についてはこちらの記事で詳しく解説しています。
相続した不動産の名義変更とは?相続登記の期限・必要書類・費用をわかりやすく解説
相続した実家には4つの主な選択肢がある
実家を相続した場合、大きく分けると次の4つの選択肢があります。
- 自分や家族が住む
- 売却する
- 賃貸する
- 空き家として保有する
どれが正解というわけではありません。
実家の場所や状態、家族構成、相続人の資金状況、将来の利用予定などによって適した選択肢は変わります。
選択肢① 自分や家族が住む
実家をそのまま自宅として利用する方法です。
すでに自分の家を持っている場合でも、子どもや他の家族が住むケースもあります。
実家に住むメリット
- 思い入れのある家を残せる
- 新しく住宅を購入する必要がない場合がある
- 空き家になるのを防げる
- 日常的に建物を管理できる
実家への思い入れが強い場合には、魅力的な選択肢です。
実家に住むときの注意点
建物が古い場合には、リフォームや耐震改修、設備交換などが必要になる可能性があります。
また、勤務先や学校から遠いなど、生活環境が現在の家族に合わないこともあります。
「家があるから住む」のではなく、今後の生活に本当に適しているかを考えましょう。
選択肢② 実家を売却する
自分や家族が住む予定がない場合は、売却が有力な選択肢になります。
売却するメリット
- 不動産を現金化できる
- 固定資産税や管理費の負担をなくせる
- 空き家管理の手間をなくせる
- 複数の相続人で財産を分けやすくなる
特に兄弟姉妹など複数の相続人がいる場合、不動産を売却して現金で分ける換価分割が適しているケースがあります。
売却すると税金がかかることもある
実家を売却して利益が出た場合には、譲渡所得に対して所得税・住民税などがかかる可能性があります。
一方、一定の要件を満たす相続した空き家については、譲渡所得から最高3,000万円を控除できる特例が利用できる場合があります。
2026年9月現在、この「被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例」は、一定の要件を満たす2027年12月31日までの譲渡が対象です。
なお、2024年1月1日以後の譲渡で、対象となる家屋や敷地等を相続または遺贈によって取得した相続人が3人以上の場合には、控除額の上限が1人あたり2,000万円となります。
また、相続税を支払った人が一定期間内に相続財産を売却した場合には、相続税の一部を取得費に加算できる特例が利用できる場合もあります。
相続した不動産の売却についてはこちらの記事で詳しく解説しています。
相続した不動産を売却するには?流れ・税金・注意点をわかりやすく解説
選択肢③ 実家を賃貸する
売却せず、第三者へ貸して家賃収入を得る方法もあります。
賃貸するメリット
- 実家をすぐに手放さずに済む
- 家賃収入を得られる可能性がある
- 将来自分や家族が利用できる可能性を残せる
立地がよく、賃貸需要がある地域なら有力な選択肢になることがあります。
賃貸には費用と管理が必要
一方で、「貸せば自動的に家賃が入ってくる」というわけではありません。
状況によって、
- リフォーム費用
- 設備の修理・交換費用
- 固定資産税
- 火災保険料
- 不動産管理会社への管理料
- 入居者募集費用
などが必要になります。
空室期間が発生する可能性もあります。
想定家賃だけを見るのではなく、費用を差し引いた実際の収支を確認することが重要です。
選択肢④ 空き家として保有する
「今すぐには決められないので、とりあえず実家を残しておこう」という選択肢もあります。
相続直後は気持ちの整理がつかず、すぐに売却したくないこともあるでしょう。
一定期間考えること自体が悪いわけではありません。
ただし、空き家にはさまざまなコストとリスクがあります。
空き家でも固定資産税などはかかる
誰も住んでいなくても、不動産を所有している限り固定資産税などの負担があります。
さらに、建物を維持するためには修繕や清掃、庭木の手入れなども必要になります。
建物は使わなくても劣化する
人が住まなくなった住宅は、換気や清掃が行われにくくなります。
雨漏り、カビ、害虫、給排水設備の劣化などが進む可能性があります。
遠方にある実家の場合、定期的に現地へ行くだけでも負担になります。
管理状態が悪い空き家には注意
適切な管理が行われていない空き家は、空家等対策の推進に関する特別措置法に基づき、「管理不全空家等」や「特定空家等」として行政から指導・勧告などを受ける場合があります。
一定の空き家について勧告を受けると、その土地に適用されていた住宅用地の固定資産税等の特例措置を受けられなくなる場合があります。
そのため、
「誰も住んでいないから、そのままにしておけばよい」
というわけではありません。
空き家を放置するリスクについてはこちらの記事で詳しく解説しています。
相続した空き家を放置するとどうなる?固定資産税・管理責任・対処法をわかりやすく解説
実家を兄弟で共有する方法は?
兄弟姉妹で実家を相続する場合、「公平だから」という理由で共有名義にすることがあります。
たとえば、兄と妹がそれぞれ2分の1ずつ所有する方法です。
しかし、共有名義にすると、将来不動産全体を売却するときには、原則として共有者全員の同意が必要になります。
さらに共有者が亡くなると、その持分について次の相続が発生し、共有者が増えて権利関係が複雑になることもあります。
「とりあえず兄弟で共有しておく」という判断は、将来の利用や売却まで考えて慎重に行いましょう。
共有名義についてはこちらの記事で詳しく解説しています。
相続した不動産を共有名義にするとどうなる?メリット・デメリットと注意点を解説
実家の価値を確認してから判断する
実家をどうするか決める前に、不動産の価値を確認しておきましょう。
ここで注意したいのは、不動産には複数の「価格」があるということです。
たとえば、
- 実際に市場で売れる価格
- 固定資産税評価額
- 相続税評価額
- 路線価
などがあります。
「相続税評価額が3,000万円だから3,000万円で売れる」というわけではありません。
売却を検討する場合には、不動産会社による査定なども利用し、市場でどの程度の価格になるのかを確認することが重要です。
不動産の相続税評価についてはこちらの記事で詳しく解説しています。
相続した不動産の評価額はいくら?土地・建物の相続税評価方法をわかりやすく解説
「いくらで売れるか」だけでなく維持費も確認する
実家を残すか売却するか考えるときには、現在の資産価値だけでなく、今後どの程度の費用がかかるかも確認しましょう。
たとえば、
- 固定資産税など
- 火災保険料
- マンションであれば管理費・修繕積立金
- 戸建てであれば外壁や屋根などの修繕費
- 庭木・草刈りなどの管理費
- 空き家管理サービスの費用
などがあります。
年間の維持費が20万円であれば、10年間保有すると単純計算でも200万円です。
大規模な修繕が必要になれば、さらに費用がかかります。
「無料で相続した家だから持っていても損はない」とは限らないことを理解しておきましょう。
実家をどうするか判断する7つのポイント
迷ったときは、次の7つを整理してみましょう。
- 自分や家族が住む予定はあるか
- 実家にどの程度の資産価値があるか
- 賃貸需要はあるか
- 修繕費はいくらかかりそうか
- 固定資産税などの維持費はいくらか
- 他の相続人はどう考えているか
- 5年後・10年後にどうしたいか
特に重要なのが最後の「将来どうしたいか」です。
今は管理できても、年齢を重ねることで実家へ通うことが難しくなる可能性があります。
子どもがその不動産を必要とするとも限りません。
迷っている間も最低限の管理は続けよう
売るか貸すか決められない場合でも、実家を放置するのは避けましょう。
定期的に、
- 郵便物を確認する
- 室内を換気する
- 雨漏りがないか確認する
- 庭木や雑草を管理する
- 水回りを確認する
- 防犯状態を確認する
などを行います。
遠方で管理が難しい場合は、空き家管理サービスなどを利用する方法もあります。
売るか迷っている場合は「期限」も確認する
実家は、「急いで売る必要はないから、何年かそのままにしておこう」と考えやすい財産です。
しかし、相続不動産には期限が関係する制度があります。
たとえば、
- 相続登記の申請期限
- 相続税の申告期限
- 取得費加算の特例を利用できる売却期限
- 相続空き家の特別控除を利用できる期間
などです。
そのため、実際に売却するかどうかをすぐに決めない場合でも、利用できる制度と期限だけは早めに確認しておくことをおすすめします。
「思い出」と「資産」は分けて考えることも大切
実家には、家族との思い出が詰まっています。
そのため、「売る」という判断に抵抗を感じる方もいるでしょう。
一方で、誰も住まない家を長期間保有すると、税金や修繕費を払い続けることになります。
建物の老朽化が進み、結果として売却しにくくなる可能性もあります。
思い出を大切にしながらも、不動産という資産を将来どのように管理していくかという視点を持つことが大切です。
まとめ|実家を相続したら「とりあえず放置」は避けよう
実家を相続した場合、主な選択肢は、
- 住む
- 売る
- 貸す
- 空き家として保有する
の4つです。
それぞれにメリット・デメリットがあり、すべての家庭に共通する正解はありません。
大切なのは、実家の価値、維持費、家族の意向、将来の利用予定を確認したうえで判断することです。
また、相続登記や税制上の特例など、期限が関係する制度もあります。
「いつか考えよう」と放置するのではなく、まず現状を整理し、家族で実家の将来について話し合ってみましょう。
不動産相続全体の手続きについては、親記事であるこちらの記事もあわせて確認してください。
不動産を相続したら何をする?手続きの流れと相続登記をわかりやすく解説
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- 相続した空き家を放置するとどうなる?固定資産税・管理責任・対処法をわかりやすく解説
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参考情報・出典
本記事の作成にあたり、主に以下の公的機関の情報を参考にしています。
※相続した実家の売却・賃貸・空き家としての管理には、登記、税務、建物の状態、地域の条例等が関係する場合があります。具体的な手続きについては法務局・市区町村・税理士・司法書士・不動産会社等へご確認ください。
※本記事は不動産・相続に関する一般的な情報提供を目的としています。相続登記、税制上の特例、固定資産税、不動産の売却・賃貸などの取扱いは個別事情や法改正によって異なる場合があります。具体的な登記については司法書士、税務については税理士または税務署、不動産の売却・活用については不動産会社などへご確認ください。



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