「親の自宅を相続したけれど、相続税ではいくらの財産として計算する?」
「5,000万円で売れそうな家なら、相続税評価額も5,000万円?」
不動産を相続するとき、多くの方が迷うのが不動産の評価額です。
不動産には、売却するときの価格だけでなく、
- 実勢価格(時価)
- 公示価格
- 固定資産税評価額
- 相続税評価額
- 路線価
など、さまざまな価格があります。
そして、相続税を計算するときに、不動産会社の査定価格をそのまま使うわけではありません。
土地については主に「路線価方式」または「倍率方式」、家屋については原則として固定資産税評価額を基に評価します。
また、一定の分譲マンションには、2024年から新しい評価方法が適用されています。
この記事では、相続した土地・戸建て・マンション・賃貸不動産などの相続税評価額をどのように考えるのか、初めての方にもわかりやすく解説します。
不動産を相続したときの手続き全体の流れから確認したい方は、先にこちらの記事をご覧ください。
不動産を相続したら何をする?手続きの流れと相続登記をわかりやすく解説
- 不動産の「売れる価格」と「相続税評価額」は違う
- 不動産にはいくつもの「価格」がある
- 相続税では土地と建物を分けて評価する
- 土地の評価方法は主に2種類
- ① 路線価方式とは?
- 路線価方式の簡単な計算例
- 土地の形によって評価額が変わることがある
- ② 倍率方式とは?
- 建物は原則として固定資産税評価額で評価する
- 固定資産税評価額はどこを見れば分かる?
- 分譲マンションの相続税評価はどうする?
- マンションの「区分所有補正率」とは?
- すべてのマンションに同じ補正がかかるわけではない
- 賃貸アパート・貸家の建物評価はどうなる?
- 賃貸アパートの土地は「貸家建付地」になることがある
- 空室がある賃貸物件は注意
- 土地を他人に貸している場合も評価が変わる
- 小規模宅地等の特例で評価額を大きく減額できることがある
- 不動産の評価額は遺産分割にも影響する
- 相続税評価額だけで遺産分割を決めない
- 不動産評価で準備したい資料
- 自分で概算できるケースと専門家に確認したいケース
- 不動産相続で確認したい3つの「金額」
- 不動産を相続した後は「保有・売却・共有」も検討する
- 相続登記も忘れずに
- まとめ|相続税評価額と売却価格を混同しないことが重要
- 不動産相続について次に確認したい記事
不動産の「売れる価格」と「相続税評価額」は違う
まず最初に押さえておきたいのが、
不動産の売却価格と相続税評価額は別のもの
ということです。
たとえば、親の自宅について不動産会社から、
「この家なら5,000万円前後で売却できそうです」
と言われたとしても、相続税の計算で必ず5,000万円として評価するわけではありません。
相続税では、国税庁の財産評価基本通達などに基づいて土地と建物を評価します。
そのため、
- 売却するときの価格
- 遺産分割で参考にする価格
- 相続税を計算するときの価格
が異なることがあります。
不動産相続では、「何のための評価額なのか」を分けて考えることが重要です。
不動産にはいくつもの「価格」がある
不動産について調べていると、さまざまな価格が出てきます。
| 価格 | 主な意味・用途 |
|---|---|
| 実勢価格 | 実際の不動産市場で売買される価格 |
| 公示価格 | 国が公表する標準地の価格 |
| 路線価 | 主に相続税・贈与税の土地評価に使われる道路ごとの価格 |
| 固定資産税評価額 | 固定資産税などの計算の基礎となる価格 |
| 相続税評価額 | 相続税・贈与税を計算するときに使用する財産の評価額 |
これらは目的が違うため、同じ不動産でも金額が一致するとは限りません。
相続税では土地と建物を分けて評価する
一戸建てを相続した場合でも、相続税の計算では基本的に、
- 土地
- 建物
を分けて評価します。
大まかな考え方は次のとおりです。
| 不動産 | 主な評価方法 |
|---|---|
| 土地 | 路線価方式または倍率方式 |
| 建物 | 原則として固定資産税評価額 |
| 一定の分譲マンション | 土地・建物の評価に区分所有補正率を反映 |
まず土地の評価方法から見ていきましょう。
土地の評価方法は主に2種類
宅地の相続税評価では、主に次の2つの方法が使われます。
- 路線価方式
- 倍率方式
どちらを使うかは、土地が所在する地域によって異なります。
① 路線価方式とは?
路線価方式とは、道路ごとに設定された「路線価」を基準として土地を評価する方法です。
路線価は、その道路に面する標準的な宅地の1平方メートル当たりの価額で、国税庁の「財産評価基準書 路線価図・評価倍率表」で確認できます。
路線価図の金額は千円単位で表示されています。
たとえば道路に、
「300」
と表示されていれば、その道路の路線価は、
1㎡当たり30万円
という意味です。
路線価方式の簡単な計算例
たとえば、次の土地があるとします。
- 路線価:30万円/㎡
- 土地面積:180㎡
- 土地の形状:標準的
単純化すると、
30万円 × 180㎡ = 5,400万円
となります。
ただし、実際の土地評価では単純に路線価と面積を掛けるだけではありません。
土地の形状や道路との関係などによって各種補正を行う場合があります。
土地の形によって評価額が変わることがある
同じ面積の土地でも、使いやすさは異なります。
たとえば、
- 奥行きが極端に長い土地
- 間口が狭い土地
- 不整形な土地
- 道路に接する状況が特殊な土地
- がけ地を含む土地
などがあります。
路線価方式では、このような土地の個別事情を一定の方法で評価へ反映させます。
そのため、
「路線価 × 土地面積」だけで正確な相続税評価額が分かるとは限りません。
② 倍率方式とは?
路線価が設定されていない地域では、倍率方式によって土地を評価することがあります。
倍率方式では、原則として、
固定資産税評価額 × 国税庁が定める評価倍率
によって評価します。
たとえば、
- 固定資産税評価額:1,000万円
- 評価倍率:1.1倍
なら、単純計算では、
1,000万円 × 1.1 = 1,100万円
となります。
評価倍率は国税庁の「財産評価基準書 路線価図・評価倍率表」で確認できます。
建物は原則として固定資産税評価額で評価する
次に建物です。
自宅などの家屋は、原則として固定資産税評価額を基に相続税評価を行います。
たとえば、
- 土地の相続税評価額:3,500万円
- 建物の固定資産税評価額:1,000万円
なら、単純化すると土地・建物の合計は、
4,500万円
となります。
建物を新築するときに3,000万円かかったからといって、相続税でも3,000万円として評価するわけではありません。
固定資産税評価額はどこを見れば分かる?
固定資産税評価額は、
- 固定資産税の課税明細書
- 固定資産評価証明書
などで確認できます。
相続した不動産について調査するときは、被相続人宛ての固定資産税納税通知書や課税明細書を探してみましょう。
ただし、課税明細書には複数の金額が記載されている場合があるため、「価格(評価額)」と「課税標準額」を混同しないよう注意しましょう。
分譲マンションの相続税評価はどうする?
分譲マンションについても、基本的には、
- 建物部分
- 敷地利用権(土地部分)
を評価します。
ただし、一定の居住用分譲マンションについては、2024年1月1日以後の相続・遺贈・贈与から新しい評価方法が適用されています。
従来の評価方法では、特に高層マンションなどで市場価格と相続税評価額との間に大きな差が生じるケースがありました。
そこで現在は、一定の居住用の区分所有財産について「区分所有補正率」を用いて評価額を補正します。
マンションの「区分所有補正率」とは?
一定の居住用分譲マンションでは、
- 築年数
- 建物の総階数
- 部屋の所在階
- 敷地持分と専有面積の関係
などを基に「評価乖離率」を計算し、そこから区分所有補正率を求めます。
その補正率を、従来の方法で計算した建物部分や敷地利用権部分の価額に反映させます。
そのため現在のマンション評価では、
「建物の固定資産税評価額+土地の持分評価額」だけで終わらないケースがある
ことに注意が必要です。
すべてのマンションに同じ補正がかかるわけではない
マンションだから必ず評価額が上がるという意味ではありません。
対象となる財産かどうかを確認したうえで、評価乖離率や評価水準などに応じて区分所有補正率を計算します。
補正が行われないケースもあります。
また、区分所有されている不動産でも、一定の低層の集合住宅など、通達の適用対象外となるものがあります。
マンションを相続した場合には、対象物件に現在のマンション評価ルールが適用されるかを確認しましょう。
賃貸アパート・貸家の建物評価はどうなる?
被相続人が所有するアパートや貸家を第三者へ貸している場合、自宅として使っている建物とは評価方法が異なることがあります。
課税時期に貸家として利用されている家屋は、原則として、
固定資産税評価額 − 固定資産税評価額 × 借家権割合 × 賃貸割合
によって評価します。
たとえば、
- 固定資産税評価額:1,000万円
- 借家権割合:30%
- 賃貸割合:100%
なら、
1,000万円 − 1,000万円 × 30% × 100% = 700万円
となります。
これは、入居者がいる貸家では所有者が自由に使用・処分できないという制約を評価に反映する考え方です。
賃貸アパートの土地は「貸家建付地」になることがある
自分の土地にアパートなどを建てて第三者へ貸している場合、その敷地は貸家建付地として評価できることがあります。
一般的な計算の考え方は、
自用地としての価額 − 自用地としての価額 × 借地権割合 × 借家権割合 × 賃貸割合
です。
自宅の敷地として自分だけで利用する土地と比べて、借家人の権利による利用上の制約があるため、その部分を考慮して評価します。
空室がある賃貸物件は注意
「アパートだから必ず貸家・貸家建付地として評価できる」とは限りません。
課税時期の賃貸状況が重要です。
課税時期に現実に貸し付けられていない部分については、貸家や貸家建付地としての評価がそのまま認められない場合があります。
一時的な空室などについては個別の事情も関係するため、実際の賃貸状況を確認して評価する必要があります。
土地を他人に貸している場合も評価が変わる
土地そのものを他人に貸し、借地権が設定されている場合には「貸宅地」として評価するケースがあります。
一般的な借地権の目的となっている宅地では、
自用地としての価額 − 自用地としての価額 × 借地権割合
を基本として評価します。
土地・建物を誰が所有し、誰が利用しているのかによって評価方法が変わるため、賃貸不動産では権利関係の確認が特に重要です。
小規模宅地等の特例で評価額を大きく減額できることがある
自宅の土地などを相続した場合には、一定の要件を満たすことで小規模宅地等の特例を利用できる場合があります。
代表的な「特定居住用宅地等」では、一定の要件を満たす土地について、330㎡まで80%減額できる場合があります。
たとえば、特例適用前の対象土地の評価額が5,000万円で、その全体が要件・面積の範囲内で80%減額の対象となるなら、単純化すると、
5,000万円 → 1,000万円
まで評価額を減額できます。
相続税への影響が非常に大きい制度です。
ただし、被相続人と相続人の居住状況、相続人の属性、取得後の保有状況など、適用には細かな要件があります。
また、この特例の適用を受けるために相続税の申告が必要になる場合があります。
不動産の評価額は遺産分割にも影響する
不動産評価が重要なのは相続税だけではありません。
遺産分割でも、
「この自宅はいくらとして考えるのか」
が問題になることがあります。
たとえば、
- 長男:自宅を相続
- 長女:預貯金を相続
とする場合、自宅をいくらとして考えるかによって相続人間のバランスが変わります。
ここで注意したいのは、遺産分割における不動産の価額と相続税評価額は、必ずしも同じではないということです。
相続税の評価額が3,000万円でも、市場では5,000万円で売却できる不動産なら、相続人間の公平を考える際に市場価値を無視するとトラブルになる可能性があります。
遺産分割協議についてはこちらの記事で詳しく解説しています。
遺産分割協議とは?進め方・必要書類・まとまらない場合をわかりやすく解説
相続税評価額だけで遺産分割を決めない
たとえば相続人が兄と妹の2人で、
- 自宅の相続税評価額:3,000万円
- 自宅の実勢価格:5,000万円
- 預貯金:3,000万円
だったとします。
兄が自宅、妹が預貯金を取得すると、相続税評価額だけを見ると3,000万円ずつで平等に見えます。
しかし、市場価値で考えると、
- 兄:5,000万円相当
- 妹:3,000万円
となります。
どの価額を基準に遺産分割するかは事情によりますが、相続税評価額だけを見て「公平」と判断しないことが重要です。
不動産評価で準備したい資料
不動産を相続したら、まず次の資料を集めてみましょう。
- 固定資産税納税通知書・課税明細書
- 固定資産評価証明書
- 登記事項証明書
- 公図
- 地積測量図
- 建物図面
- 賃貸借契約書
- 不動産購入時の売買契約書
土地については、国税庁の路線価図・評価倍率表も確認します。
自分で概算できるケースと専門家に確認したいケース
標準的な形状の自宅土地などであれば、路線価図と面積から大まかな評価額を確認できることがあります。
一方、次のような不動産は評価が複雑になりやすいため注意が必要です。
- 不整形地
- 間口が狭い土地
- 奥行きが特殊な土地
- 複数の道路に面している土地
- 私道を含む土地
- 賃貸アパート
- 貸宅地
- 高層マンションなど一定の区分所有財産
- 利用状況が複雑な土地
- 小規模宅地等の特例を検討する土地
評価額が大きく変わる可能性がある場合には、相続税に詳しい税理士などへ確認することをおすすめします。
不動産相続で確認したい3つの「金額」
不動産を相続したら、最低でも次の3つを分けて考えると分かりやすくなります。
① 相続税評価額
相続税を計算するための金額です。
② 実勢価格・査定価格
現在売却した場合に、どの程度の価格になるのかを考えるための金額です。
③ 維持するためのコスト
固定資産税、管理費、修繕費など、相続後に所有し続けるための負担です。
「評価額が低いから相続する」のではなく、価値と負担の両方を見ることが大切です。
不動産を相続した後は「保有・売却・共有」も検討する
相続税評価額を確認した後は、不動産を誰が取得し、その後どうするのかを考える必要があります。
たとえば、
- そのまま住む
- 賃貸する
- 売却する
- 複数の相続人で共有する
といった選択肢があります。
売却する場合の流れや税金についてはこちらの記事で詳しく解説しています。
相続した不動産を売却するには?流れ・税金・注意点をわかりやすく解説
共有名義にする場合の注意点についてはこちらをご覧ください。
相続した不動産を共有名義にするとどうなる?メリット・デメリットと注意点を解説
相続登記も忘れずに
不動産を相続した場合には、相続税評価だけでなく、相続登記についても確認する必要があります。
2024年4月1日から相続登記は義務化されています。
相続登記の期限・必要書類・費用についてはこちらの記事で詳しく解説しています。
相続した不動産の名義変更とは?相続登記の期限・必要書類・費用をわかりやすく解説
まとめ|相続税評価額と売却価格を混同しないことが重要
相続した不動産の評価で最も重要なのは、
「不動産の価格は1つではない」
と理解することです。
相続税を計算するときは、原則として、
- 土地:路線価方式または倍率方式
- 建物:固定資産税評価額を基に評価
- 一定の分譲マンション:区分所有補正率を反映
- 賃貸不動産:借地権・借家権や賃貸割合などを考慮
して評価します。
一方、遺産分割では市場価値も重要になります。
そのため、
「相続税評価額が3,000万円だから、この不動産の価値は3,000万円」
と単純に考えないようにしましょう。
不動産相続では、
- 相続税評価額
- 実際に売却できる価格
- 誰が取得するのか
- 相続後の維持費
- 将来売却するのか
まで合わせて検討することが、円満な遺産分割につながります。
不動産相続全体の流れについては、親記事であるこちらの記事をご覧ください。
不動産を相続したら何をする?手続きの流れと相続登記をわかりやすく解説
不動産相続について次に確認したい記事
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- 実家を相続したらどうする?住む・売る・貸す・空き家にする場合の選択肢を解説
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参考情報・出典
本記事の作成にあたり、主に以下の公的機関の情報を参考にしています。
※不動産の相続税評価は、土地の形状、接道状況、利用状況、賃貸の有無、各種特例の適用可否などによって大きく変わる場合があります。具体的な評価や相続税申告については、税理士または税務署へご確認ください。
※本記事は不動産・相続税に関する一般的な情報提供を目的としています。不動産の相続税評価は、土地の形状・利用状況・権利関係・マンションの条件などによって異なります。また、小規模宅地等の特例などには適用要件があります。具体的な相続税評価・申告については税理士などの専門家へご確認ください。



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